正しいことだけでは、人は変われない ― 私が「伝え方」を変えた理由 ―

前回の記事ではハラスメントそのものについて書きました。今回は、支援する側として私自身が何を学び、どう変わってきたのかを書いてみたいと思います。

私が仲人として「伝え方」を変えた理由
最近、ハラスメントに関するニュースを目にしない日はないほど、私たちの社会は「言葉」や「伝え方」に敏感な時代になりました。
「もう部下を叱れない。」

「何を言ってもハラスメントと言われてしまう。」
そんな声を耳にする機会も増えています。

確かに、指導する立場の人にとっては難しい時代になりました。

しかし、私はこの問題を「言ってはいけない時代になった」とは思っていません。本当に問われているのは、「何を伝えるか」ではなく、「どう伝えるか」なのではないでしょうか。

このことは、企業の管理職だけでなく、私が15年以上携わってきた結婚相談所の仕事でも強く感じています。実は私自身も、この数年で会員さんとの向き合い方が大きく変わりました。

正しいことを伝えれば、人は変わると思っていた頃
結婚相談所を始めた頃の私は、とても熱い仲人だったと思います。
会員さんに幸せになってほしい。
遠回りをしてほしくない。

そんな思いが強いあまり、耳の痛いことも率直に伝えていました。

「もっとこうしないとダメですよ。」
「だからうまくいかないんです。」
今振り返れば、そんな言葉を口にしていたことも少なくありません。

もちろん、相手を否定したかったわけではありません。
本気で幸せになってほしい。
その一心でした。

しかし、結果として、その言葉が会員さんを傷つけてしまったこともありました。相談所から離れてしまった方もいました。当時の私は、「正しいことを伝えること」が支援だと信じていたのです。

キャリアコンサルタントとして学んだ「伝え方」
その後、国家資格キャリアコンサルタント、キャリアコンサルティング技能士として学ぶ中で、私には大きな気づきがありました。

傾聴や受容、共感が大切であることは、以前から理解していました。
しかし、本当に難しいのはその先でした。
「自己一致」です。
「それは違うのではないか。」

そう感じた時、その思いをどう伝えるのか。

ここに、支援者としての力量が問われるのだと気づかされました。

経験豊富な支援者であっても、この「伝え方」が難しい。正しいことを言うことと、相手に届くように伝えることは、まったく別の技術なのです。それは人によって価値基準も受け止め方も成長度合いも理解力もニーズも違うからです。

私は少しずつ、自分が伝える言葉を変えるよう意識するようになりました。

以前なら、
「それではダメなんです。」

と言っていた場面で、
「その時、どう思われましたか。」
「そのまま続けると、どうなりそうだと思いますか。」
「他にもAやBという方法があると思うのですが、試してみたいものはありますか。」
そんな問いかけをするように心がけるようになりました。

答えを与えるのではなく、会員さん自身が気づくことを大切にするようになったのです。
もちろん、機が熟していると感じた時は、私の考えをフィードバックさせていただくこともありますが、決して押し付けるようなことはしません。

グローブを持たない相手に硬球を投げてはいけない
時折、テレビで活躍されている仲人さんが、婚活中の方へ厳しい言葉を投げかけているのを目にすることがあります。その内容には、「本当にその通りだ」と思うことは少なくありません。

仲人という仕事をしている人の多くは、会員さんを我が子のように思っています。だからこそ、「幸せになってほしい」「遠回りをしてほしくない」という気持ちが強くなり、情熱的な言葉になるのです。

その気持ちは、私にもよく分かります。

しかし、実際の現場では、それをそのまま伝えることはできません。私は、それはグローブを持たない相手に硬球を投げるようなものだと思っています。どれほど正しいボールでも、受け止める準備ができていなければ、相手は痛みしか感じません。

人は正論だけでは変われないのです。

まず必要なのは、「この人は自分の味方なんだ」と安心してもらうこと。その安心感があって初めて、耳の痛い言葉も受け止められるようになるのだと思います。

ただ、ここで一つだけ誤解のないようにお伝えしておきたいことがあります。
ここまで読むと、「メディアで活躍されている厳しい仲人さんを批判しているのでは?」と受け取られる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、決してそういう意図ではありません。

私自身、テレビや雑誌、SNSなどでご活躍されている仲人さんの多くは、本当に素晴らしい支援者だと思っています。テレビという限られた時間の中では、どうしても印象に残る厳しい場面が切り取られます。しかし、それは支援のほんの一場面に過ぎません。実際には、一人ひとりの会員さんと真摯に向き合い、幸せを願いながら日々活動されている方ばかりです。

現に私自身も、条件が厳しい会員さんに対して、そのような仲人さんが所属する相談所から素敵なお相手をご紹介いただき、ご成婚へとつながった経験が何度もあります。

つまり、支援のスタイルは人それぞれなのです。
厳しく背中を押すことが、その方にとって最善の支援になる場合もあります。一方で、私は少しずつ寄り添いながら、その人自身が気づくのを待つ支援を選んでいます。

どちらが正しいという話ではありません。

目指しているゴールは同じです。

それは、一人でも多くの方に幸せになっていただくこと。
私は、その想いは仲人という仕事に携わるすべての方に共通していると信じています。

支援者には、それぞれの経験があり、それぞれの信念があります。だからこそ大切なのは、方法の違いを競うことではなく、その先にいる一人の人の幸せを、ともに願い続けることだと信じています。

忘れられない一言
今でも忘れられない出来事があります。

もう何年も前のことです。
仲人同士が会員さんを紹介し合う「プロフィール交換会」でのことです。

私が紹介した会員さんのプロフィールを見た、ある仲人さんが、
「この人じゃあ無理よ。」
そう言われたことがありました。

今でも、その言葉を思い出すと胸が痛みます。

もちろん、その方の真意は分かりません。
「うちでは合う方がいない」という意味だったのかもしれません。

しかし、その時の私は本当に腹が立ちました。

「人の可能性を、そんな簡単に決めつけるのか。」
そう思ったことを今でも覚えています。

正直、その仲人さんのことを嫌いになりかけました。

でも、時間が経って気づいたことがあります。もし私が、その感情だけで「あの仲人さんとはもう関わらない」と決めてしまったら、一番大きな損失を受けるのは誰でしょう。

私ではありません。
その仲人さんでもありません。
会員さんです。

実際、その後、その仲人さんと力を合わせたことで、自社の会員さんが成婚退会されたこともありました。

だから私は、自分に言い聞かせています。支援する立場の人間は、自分の好き嫌いで人のご縁を狭めてはいけない。会員さんの幸せを最優先に考えるなら、私自身も感情をコントロールし、成長し続けなければならないのです。

人には、自分で変わる力がある
この仕事を続けていて、何度も驚かされることがあります。

「この一年以内に成婚退会します。」

そう宣言された会員さんが、本当に成婚されることが少なくありません。

また、恋愛経験が少なく、自分に自信を持てなかった女性が、真剣交際に進む頃になると、驚くほど表情が柔らかく、美しくなることがあります。私は何度も、その変化を見てきました。

人は、誰かに変えられるのではありません。
自分自身で「変わろう」と思えた時に、本当の意味で変わり始めるのです。

だから私は、会員さんを変えようとは思いません。その人が本来持っている成長する力や、気づく力を信じたいのです。私の役割は、答えを押しつけることではなく、その力が花開くまで寄り添うこと。

そして、安心して硬球を受け止められる「グローブ」を、一緒につくっていくことなのだと思っています。

おわりに
ハラスメントが問題になる今の時代だからこそ、私は改めて感じています。
大切なのは、「何を言うか」ではありません。
相手の尊厳を守りながら、どう伝えるか。

そしてもう一つ。
支援者は、会員さんだけに成長を求めるのではなく、自分自身も変わり続けなければならないということです。

私は、人は変われると信じています。
全ては自分は変われる、変われないという思い込みがスタートになっているからです。

だからこそ、会員さんの可能性を信じる前に、まず自分自身が変わり続ける支援者でありたい。これからも、その気持ちを忘れずに、一人ひとりの人生に寄り添っていきたいと思います。

松田 たけお

「『傷ついた』だけで人を裁いていいのか?ハラスメント社会の落とし穴」

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