
「もう会社を辞めたい……」
近年のキャリアコンサルタントとしてのご相談では、トップランクのご相談かもしれません。今の仕事が面白くない。 給料が上がらない。 上司と合わない。 正当に評価されていない。 この会社にいても成長できない気がする。
そして、その先に「転職」という選択肢が出てきます。でも私は、最近は「転職したい」と相談されたとき、すぐに「どんな会社がいいでしょう?」とは聞かないようにすることにしています。
相談の流れにもよりますが、できるだけ「会社を辞めて転職することで、何を得たいのですか?」を、ご本人の言葉でお話しいただくことを優先することにしました。
なぜなら、「会社を辞めたい」と「転職したい」は、必ずしも同じ意味ではないからです。
「会社を辞めたい」の裏側にあるもの
例えば、「上司が嫌だから辞めたい」という場合。何が嫌なのでしょうか。評価されないことなのか。
仕事を任せてもらえないことなのか。
価値観が合わないことなのか。
コミュニケーションが合わないことなのか。
ここを整理しないまま転職すると、環境が変わっても、また同じような悩みを抱えることがあります。「仕事がつまらない」という場合も同じです。
ですから、転職先を探す前に、「自分は仕事に何を求めているのか?」を考える必要があります。
私自身も、転職を何度か経験していますが、転職によって人生の方向が大きく変わりました。
新卒で入社した専門商社では法人営業として12年間勤めました。毎月、毎年のように予算達成を追いかける中で、ある時から、「自分は何のために働いているのだろう?」と思うようになりました。
その後、小さなリフォーム会社へ転職。
新規開拓営業、マーケティング、契約、クロージング、さらに新卒採用や社員研修、評価・人事制度、新規事業や新店舗の立ち上げなど、幅広い仕事を経験させていただきました。途中には、ガラスにフィルムを貼る職人も経験しましたが、職人の仕事は体力的に続きませんでした。
そこで、
「自分は体力ではなく、頭と精神、気力で勝負していこう」と考えるようになりました。
そして、さまざまな経験を通じて、
* 目的達成のための選択肢を考える
* 相手も気づいていない強みや可能性を引き出す
* 人と人の間に入り、関係を調整する
* 試行錯誤しながら淡々と最後までやり抜く
ことが、自分の強みだと少しずつ分かってきました。
転職は、私にとって単に「会社を変えること」ではありませんでした。自分でも気づいていなかった可能性を発見する旅のようなものでした。少し遠回りしたようにも思いますが。
転職は「得ること」だけではない
ただし、転職を考えるときに、もう一つ大切なことがあります。
それは、
「何を得るか」だけではなく、「何を手放すことになるのか」
を考えることです。
例えば、「安定」を大切にしている人。今の会社では、仕事内容も人間関係も分かっていて、毎月の収入も安定している。
しかし転職すれば、転職活動中から不安定になる可能性があります。入社後も、新しい仕事や人間関係を一から築かなければなりません。
また、今の会社で高く評価されている人ほど、新しい職場では注意が必要です。これまで「仕事ができる人」と評価されていても、転職先では新人と同じように学び直す必要があるかもしれない。つまり、「これまでの評価や自信を一度リセットする覚悟」が必要になる場合があります。
そして、働き方そのものが変わることもあります。これまでチームで成果を出すことにやりがいを感じていた人が、個人の成果を強く求められるかもしれない。反対に、「言われたことをきちんとやる」ことが評価されていた人が、転職先では「自分はどうしたいのか」と、主体的な行動を求められるかもしれません。これは良い悪いではありません。
転職とは、環境だけでなく、自分に求められる役割も変わる可能性がある。ということです。
だから私は、
「転職することで何を得たいのか?」と同時に、「そのために、今まで当たり前だった何を手放す覚悟があるのか?」も考えてほしいと思っています。
転職は「逃げ」ではない
私は、自分自身の転職を「逃げ」だったとは思っていません。環境を変えたからこそ経験できたことがあり、その経験が今の仕事につながりました。
そして、「こうあるべき」「こうしなければならない」という固定観念からも、一歩外へ出ることができました。
だから、今「会社を辞めたい」と思っている方へ。
すぐに転職サイトを開く前に、4つのことを考えてみてください。
「私は、今の会社を辞めたいのか?」
「それとも、今の働き方を変えたいのか?」
「転職することで、本当は何を得たいのか?」
そして、
「そのために、何を手放す覚悟があるのか?」
転職することが正解とは限りません。 今の会社に残ることが正解とも限りません。大切なのは、誰かに決めてもらうことではなく、自分が納得できる理由を持って、自分の人生を選択すること。
私は、それこそがキャリアにおける「自分軸」だと思っています。
そして時には、環境を変えたことで、今まで自分でも知らなかった「自分自身」に出会えることがあります。
私自身が、そうであったように。







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