
リスキリングとリカレント教育から考える
「リスキリング」や「リカレント教育」という言葉を耳にする機会が増えました。
AIやデジタル技術の進化が進むなかで、「これからの時代に必要なスキルを身につけなければならない」「仕事を失わないために学び直さなければならない」と感じている人も少なくないでしょう。
私自身も、これまでの経験をさらに深め、相談者との信頼関係を築き、専門性を高めるために、国家資格キャリアコンサルタントや2級キャリアコンサルティング技能士の資格を取得してきました。これまで積み重ねてきた経験に、専門的な知識や理論を加えることは、私自身のキャリアにとって間違いなく意味のある学びでした。
しかし振り返ってみると、自分自身を成長させてくれた学びは、キャリアや心理学に関するものだけではなかったように思います。
キャリアとは直接関係のない日本や世界の歴史文化や梵字について学んだりコミュニティーへ参加したこと。趣味を通じて、初対面の方々とコミュニケーションを取り、ときには一日を共に過ごしながら仲良くなったこと。普段は足を運ばない場所へ出かけ、都会では味わえない自然や空気に触れ、普段とは違う感覚が研ぎ澄まされる経験したこと。
一見すると、これらはキャリア形成とは関係のない「遠回り」に見えるかもしれません。
しかし、人と接する仕事をしている私にとっては、その一つひとつが決して無駄ではなかったように思えるのです。知らない世界に触れることで、自分が当たり前だと思っていた価値観が広がる。普段とは違う人たちと接することで、自分とは異なる考え方や人生観を知る。自然の中に身を置くことで、忙しい日常では気づかなかった自分自身の感覚を取り戻す。
そうした経験の積み重ねが、結果として相談者の話を理解する力や、人の気持ちを想像する力にもつながっているように感じます。
今は、AIによって多くのことを効率化できる時代です。情報を集めることも、文章を書くことも、仕事を進めることも、これまでより短い時間でできるようになりました。
確かに、それは素晴らしいことなのかもしれません。
しかし、人生においては、すべてを効率化すればよいとは限りません。効率だけを求めていれば、出会わなかった人がいるかもしれません。遠回りをしなければ、見ることのできなかった景色があるかもしれません。
一見すると無駄に思える時間の中にこそ、新しい発見や、自分でも気づかなかった可能性が眠っていることがあります。
ダイヤは、ダイヤによって磨かれるといいます。
私たちもまた、人との出会いや関わり、自然の中で磨かれていくのではないでしょうか。年とともに体力は衰えても、心の成長や進化に終わりはないのです。
新しいスキルを身につけるために頑張ることも素晴らしいことです。
しかし、自分とは違う世界に触れること、人と出会うこと、そして、ときには目的のない時間を過ごすことも、それと同じくらい大切な時間なのです。
リスキリングやリカレント教育を考えるとき、「次に何を学べば仕事に役立つのか」という視点だけではなく、「この経験や学びを通して、自分はどんな人間になりたいのか」、そんな視点や目的を持つことも、これからの時代には必要なのではないでしょうか。
効率的に進むことだけが、成長ではありません。効率化によってゆとりが生まれた時間で、ときには寄り道をし、知らない世界をのぞき、これまで出会わなかった人と話してみる。
その一見非効率な経験の中にこそ、本当の自分を知る、本当の学びがあるのかもしれません。







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