ホワイトカラーは再定義され、職人が再評価されていくAI時代の働き方

生成AIの進化は、私たちの働き方に静かですが確実な変化をもたらしています。

文章作成、企画書、調査、要約──かつてホワイトカラーの中核だった業務の多くは、すでにAIが短時間でこなせる時代になりました。だからといって、「ホワイトカラーは不要になる」と単純に言い切ってしまうのは、少し行き過ぎでしょう。

正確には、ホワイトカラーは“再定義”されつつあるのです。

AIが代替するのは「作業」であり、人に残るのは「判断」「責任」「文脈理解」です。考えずに回す仕事は減り、考え抜く仕事だけが残る。これが、これからのホワイトカラーの本質です。

一方で、もう一つ静かに価値を上げている存在があります。

それが職人ではないかと思っています。

すでに始まっている「職人不足」という現実
建築、修理、メンテナンス、微調整。
これらの分野では、すでに深刻な人手不足が起き始めています。

理由は明確です。腕の良い職人の多くが高齢化し、引退の時期を迎えている一方で、若い世代が十分に育っていないからです。

かつての職人は、親方の背中を見て、現場で怒られながら、「見て覚えろ」「身体で覚えろ」という世界で技術を身につけてきました。この育成方法が悪かったわけではありません。ただ、今の時代には合わなくなってきているのです。

そう、時代は変わったのです。では、未来の職人はどう育てるのか?

現代の若い世代は、「意味がわからない苦労」には耐えません。逆に言えば、構造や理由が見えれば、驚くほど吸収が早いのも特徴です。これからの職人育成に必要なのは、技術を言語化・可視化する力、工程を分解して教える設計力、デジタルやAIを補助輪として使う発想です。

すでに大手では導入済みと聞きますが、たとえば、
・修理履歴やノウハウをデータとして残しAIで分析
・ベテランの判断プロセスをAIによって言語化する
・AIによるシミュレーションや動画で事前学習を行う

こうした工夫によって、
「10年かかって覚えた技術」を「3〜5年で再現できる環境」を作ることは、十分に可能になってくるのではないかと考えます。

AIは職人を奪う存在ではありません。
職人を育てるための“教育基盤”として価値が認められるのです。

となると、これから価値が高まる職人像は、単なる“昔気質の頑固な人”ではありません。

・技術を磨き続ける人
・状況に応じて微調整できる人
ここまでは、今までと何も変わりませんが・・・

・AIやデジタルを道具として使える人
・自分の技を次世代にわかりやすく伝えられる人
こうした人は、AI時代においても替えがききません。

情報はAIが持ち、最終的な手触りを決めるのが人間。

この役割を担える職人は、今後ますます貴重な存在になります。

仕事の価値は「頭か、手か」ではなく「人にしかできない」
AI時代は、ホワイトカラーか、職人か、という二項対立の時代ではありません。問われるのは、その仕事に「判断」「責任」「身体性」があるかどうかだと思っています。机の上でも、現場でも、人にしかできない役割を担う人は、必ず必要とされます。2026年以降、仕事の価値基準は大きく塗り替えられていくでしょう。

その変化を恐れるより、「自分はどの価値を提供できる人間なのか」を考えることが、これからのキャリアを支える最も重要な視点になるのかもしれません。

2026年に自宅のリフォームを実施するために職人さんや親方と話をしていて、ふと感じたことを記事にしてみました。

松田 たけお

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA